ウイスキーについて
1.ウイスキーあれこれ
私はお酒全般好きなのですが、特にモルトウイスキーがスキです。理由は単純に美味しいと感じるのと、蒸留酒特有のプリン体レスと言う所。。。だけでなく、モルトは同じでも、仕込みの違い、蒸留器の違い、熟成樽の違い、年数の違い, 、飲み方などで大きく味や香りが変わって面白いからです。
細かい事は言わずに美味しければいいとも思っていますが、ウイスキーってそもそも何なんだろうと思って昔調べました。 ウイスキーにまつわる書き物には必ず出ててくるのですが、一応まとめてみます。
※記述内容:定義、起源・語源
■定義
ウイスキーの定義はそれぞれの国によって異なっており、原料、製法、熟成年数などが各国ごとに定められていますが、一般には次のように定義されます。
「穀類を原料として、糖化、発酵の後に蒸溜をおこない、木製の樽で貯蔵熟成させてできるお酒」
特に重要な工程が「木製の樽においての貯蔵熟成」すると言う所で、一般的なビールや焼酎などの製法と違い、ウイスキーは樽の中で長い年月をかけて熟成する為、深い琥珀色をしており、この熟成によってウイスキーの香りがまろやかに、そして複雑な味わい、深いコクを持つようになります。
まず、ウイスキーには、大麦麦芽のみを使用した「モルトウイスキー」とトウモロコシ、小麦などの穀物を使用した「グレーンウイスキー」があり、原材料の単価からみてもモルトウイスキーの方が値段が高い傾向です。
世界には5大ウイスキー(スコットランド、アイルランド、カナダ、アメリカ、日本)があり、その他にも台湾やインドなど様々な地域で作られていますが、おうちでウイスキーではスコッチウイスキーをメインに扱うため、スコッチウイスキーについて記述します。
スコッチウイスキーには法律によって厳格な定義があり、簡単にまとめると以下です。
(1)スコットランドの蒸留所にて、水および発芽させた大麦(これに他の穀物の全粒のみ加えることができる。)から蒸留されたものであって、酵母の添加のみにより発酵されたもの。
(2)蒸留液は94.8パーセント未満の分量のアルコール強度に蒸留され、700リットル以下の容量のオーク樽においてのみ熟成される。
(3)スコットランドでのみ3年以上熟成される
(4)水、カラメル色素以外の一切の物質が添加されない
(5)最低でも40%以上のアルコール分を有する
ちなみに日本ではウイスキーについて酒税法の中で定義があり、その中には醸造場所や保管についての決まりはなく、穀物を発酵させて蒸留した原酒が10%入っていればウイスキーとして良いとなっていました。
たった10%でウイスキーを名乗れるというのもどうなのかなと思いますが、実際にアルコールを添加した物が多く出回っています。
当然、スコットランドの定義に当てはまるようなウイスキーも存在していましたが、日本と言う国ではお酒の定義はあくまで酒税に関り、作りやすくして税金を取るという構図があると思っています。
個人的にはお酒はその国の文化(風土や人柄など)を反映しており、スピリッツともいわれる様に、人々に深く根付いたものであると思っていて、それを国が認めて法律化するスコットランドやアメリカなどの考え方がしっくりきます。
昨今日本のウイスキーが世界的に評価されている中、本来、ウイスキーとは呼べない様なものがジャパニーズウイスキーとして販売されている状態に生産者や業界が声をあげ、2021年4月1日から業界内で日本洋酒酒造組合が基準を設けました。
ラベルに「ジャパニーズウイスキー」または「Japanese whisky (whiskey)」と表示する商品は、以下の品質基準を満たす必要があります。
• 原材料には麦芽などの穀類を使用すること(麦芽は必ず使用すること。)
• 日本国内で採取された水のみ使用すること。
• 糖化、発酵、蒸溜は日本国内の蒸溜所で行うこと。
• 蒸溜溜出時のアルコール分は95度未満であること。
• 内容量700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること。
• 日本国内で容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること。
• 色調の微調整のためにカラメル(E150a)の使用を認める。
これはあくまで日本洋酒酒造組合が発行しているもので、強制力は無いのですが、ウイスキーの文化を守ろうとした人々の熱い思いがそこにある気がして本当に感銘を受けます。
日本もお酒に対して、税金観点でなく、文化を守る観点で定義づけをしてほしいなと個人的には思います。
■起源と語源
ウィスキーの起源についてはアイルランド説とスコットランド説が古くから知られていますが、共に15世紀以前に根拠となる証拠はなく裏付けられていません。
アイルランドで最も早くにウィスキーについて言及される史料には、1405年の首長の死因はクリスマスに「命の水(アクア・ヴィテ)を暴飲したからだ」とあるそうです。
一方、スコットランド説の場合は、1494年に「王命により修道士ジョン・コーに8ボルのモルト(麦芽)を与えてアクアヴィテを造らしむ」が最古の根拠であり、これは同時にウィスキーに関する最古の文献だそうです。
書物からするとアイルランドが古いようですが、個人的には昔の人がなんとなく穀物を発酵させて飲んでいて、蒸留技術が伝わって、蒸留するようになったと思っていて、隣国なのでどちらの国にも似たようなものは似たような時期に存在していたのではと考えています。なのであまり起源を深堀りする必要はないのかなと感じています。
語源についてですが、諸説ある様ですが
まず、ウィスキーの英語表記には、「whisky」 と 「whiskey」の二通りの表記があり、スコッチウイスキーは「whisky」、アイルランドやアメリカのバーボンは後者を使っています。
蒸留アルコールを意味するラテン語の 「aqua vitae」 (アクア・ウィタエ、「命の水」の意味)に由来しています。
スコットランドやアイルランドにアルコールの蒸留技術が伝わると、それぞれの地域で使われるゲール語やアイルランド語に翻訳されて、「uisge beatha」 「uisce beatha」 (ウィシュケ・ビャハ、「命の水」の意味)となり、その後、「水」の意味のウィシュケが訛って ウィスキーになったと言われています。
ちなみに、ラテン語の 「aqua vitae」(命の水)を由来とするお酒はウィスキーだけではなく、ブランデーやウォッカなども語源は同じと言われています。
1608年にアイルランドのブッシュミルズ蒸溜所は、ウイスキー蒸留の許可をイングランド王ジェームズ1世から得て操業を開始しており(正式な登録記録は1784年とされている)、世界で最も古く認可されたウイスキー蒸留所を名乗っています。
まだ製法が確立していなかったこの頃のウィスキーは、他の穀物原料の蒸留酒(スピリッツ)と同じく熟成させるものではなく、現代ではニューポットと呼ばれるが、色は無色透明で、味はドライかつ荒々しかったと言われています。 1707年、合同法によってイングランドとスコットランドが合併(グレートブリテン王国の成立)すると、スコットランドの蒸溜所に最初の課税が行われましたが、これはスコットランドの酒造に不公平な重税であり、さらに様々な名目で税金は釣り上がっていったそうです。
1725年のイギリス麦芽税が施行される頃には、スコットランドの蒸溜所のほとんどは廃業するか、地下に潜って密造するようになっていたと言われていて、この時期のスコットランドの密造酒時代が現在のウイスキーのスタイルに深くかかわっています。
密造業者らは、政府の取締官から逃れるために、山奥に蒸留所を造り、煙が見えなくなる夜にウィスキーの蒸留を行い、地下室や祭壇の下、棺の中など、様々な場所に樽に入れたウィスキーを隠しました。尚、この頃のスコットランドのウイスキー生産量の半分以上は違法酒だったと推定されています。
人の目から隠すことで樽での長期熟成が行われ、ウィスキーはマイルドなものとなり、また、樽(特にシェリー樽)の香りや風味が添加され、現代に知られる琥珀色を帯びるようになり、今のスタイルが確立したと言われており、樽で熟成させるという工程がウィスキー製法の最も重要な要素となっています。また、この製法はこの時期にアイルランドにも広まった様です。
2.モルトウイスキーとグレーンウイスキー
ウイスキーは原料によって大きく2つの種類があります。
それが「モルトウイスキー」と「グレーンウイスキー」です。
ざっくり書くと以下になります。
「モルトウイスキー」は大麦麦芽を使用して単式蒸留器(ポットスチル)で蒸留したもの。
「グレーンウイスキー」は大麦を含む穀物に麦芽を混ぜて発酵させて連続蒸留器で蒸留したもの。
例外はあれどおおよそ材料+製法が異なると言う事になります。
続いて少し細かく書いていきます。
まず、「モルトウイスキー」ですが、
「モルト」とは麦芽(ばくが)の事で、麦、特に大麦の種子を発芽させたものです。
この麦芽を粉砕し水と混ぜで糖化させたものを発酵させる事でアルコールが生成されます。
出来上がった7~8%のアルコールが混じったウォッシュと呼ばれる液体を、単式蒸留器(ポットスチル)を使用して蒸留したものが「モルトウイスキー」となります。 ポットスチルは、銅で作られ、その形は底面から上に行くほど先がすぼまった形をしています。
ちなみに、銅である事にも理由があり、発酵中に生成されるオフフレーバーと呼ばれる雑味の原因物質の主体である硫化物をを化学反応で除去してくれます。
具体的な反応例は以下です。
H2S(硫化水素)+CuO(酸化銅)→CuS(硫化銅:黒い物質)+H2O(水)
接触時間や温度によって化学変化が異なる為、ポットスチルの形状はメーカーのコンセプトによって様々な工夫がされています。
麦芽から作るモルトウイスキーは少量生産に適しており、単式蒸留は伝統的な手法で、原料の味わいや個性が表現できますが、大量生産や品質の安定が難しいと言われています。
スコットランドでは大麦麦芽のみを使用し、単式蒸留したウイスキーが「モルトウイスキー」となります。
次に「グレーンウイスキー」です、 こちらは大麦を含むトウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀物(グレーン)を主原料に、そこに大麦麦芽を加えて糖化・発酵させ、連続式蒸留器で蒸留したウイスキーを「グレーンウイスキー」と呼びます。
連続式蒸留機は塔のような形をしており、連続して大量のウォッシュを投入して蒸留することができる為、短時間でより多くのアルコールを抽出する事が可能な為、大量生産に向いた蒸留方法です。
この連続式蒸留器の特許をイーニアス・コフィーが1831年に取得した為、コフィー(カフェ)の名をとってコフィー(カフェ)・スチル、あるいは特許を意味する英語パテントからパテント・スチルと呼ばれるようになりました。
「グレーンウイスキー」は「モルトウイスキー」に比べて飲みやすい反面、香味に乏しく、サイレントスピリッツと呼ばれたりします。
その為、通常はモルトウイスキーに加えられ、風味や味わいの調整に使われる事になります。
ちなみに、大麦麦芽を使用したグレーンウイスキーはほとんどないのですが、日本のニッカウヰスキーが発売するニッカカフェモルトの様に原材料にモルトだけを使用し、カフェスチルを用いて蒸留してたものも存在し、このウイスキーは大麦のみの原料でも「グレーンウイスキー」となっています。
ちなみに、なぜ麦芽を使用するのかと言う所について少し細かく書くと、
大麦の種の中には不活性の糖化酵素(アミラーゼ)が多く含まれており、発芽によって酵素が活性化されます。
活性化によって、種子中のでんぷん質が糖化され麦芽糖が生成されます。
上記の様に酵素が活性化するのは、成長し根と芽が出て光合成が可能になるまでの間、必要なエネルギーを得るための物です。
ちなみにこのメカニズムは大麦に限らず全ての種子に共通するものですが、米やとうもろこしは酵素の量が少なくて、 大麦が食用かつ安価な上に酵素の質、量ともに優れています。
このメカニズムによりできあがった麦芽糖は古くから、酒や酢、水飴の製造に用いられてきました。
と言う事で、大麦の種子中のでんぷんを発芽によって酵素を活性化させ糖化させていくと言う事がウイスキーづくりに重要な要素となります。
3.ブレンデッドとシングルモルト
ウイスキーには大きく2つのカテゴリーがあります。
それが「ブレンデッドウイスキーと」「シングルモルトウイスキー」です。
ざっくり書くと以下です、
「ブレンデッドウイスキー」は複数のモルト・グレーンをブレンドしたもの。
「シングルモルトウイスキー」は単一蒸留所のモルトウイスキーをヴァッティングしたもの。その中でも1つの樽から作られたものは「シングルカスク」と表現されます。
続いて少し細かく書いていきます。
「ブレンデッドウイスキー」についてですが、
銘柄は「ジョニーウォーカー」「バランタイン」「シーバス・リーガル」、日本では「角瓶」が有名でしょうか。
前述した「グレーンウイスキー」と「モルトウイスキー」をブレンドしたものになります。
ブレンドすると言っても、2種類を単純に混ぜている訳ではありません。
モルトウイスキーだけで10種類以上(50種類になることも、、、)、そこにグレーンウイスキーを数種類ブレンドしていきます。
しかも熟成年数も様々な原酒を用いるため、組み合わせ数は無限にありそうです。
このブレンドに携わる人をブレンダーと言い、総責任者をマスターブレンダーと呼びます。
ブレンデッドウイスキーの「ホワイト&マッカイ」マスターブレンダーである「偉大なる鼻」をもつ伝説の人、リチャード・パターソン氏がで有名で、そのテイスティング方法はtiktokでもバスった様です。
話がそれましたが、「ブレンデッドウイスキー」は複数の蒸溜所で造られたモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンダーが厳選し、精密に組み合わせることで、複雑な風味を持つ芸術作品に仕上げられています。
シングルモルトに比べて、複雑な味わいでも比較的安価に作り出せるため、低価格帯のウイスキーはブレンデッドウイスキーである事が多く、私にとっては非常にありがたい存在です。
似たような言葉の中に、「ヴァッテドウイスキー」があります。
こちらはモルトウイスキー同士やグレーンウイスキー同士を混ぜ合わせたウイスキーの事で、同じ種類を混ぜ合わせる事を「ヴァッティング」と言う為、「ヴァッテドウイスキー」と呼ばれます。
次に「シングルモルトウイスキー」です。
スコッチウイスキーで「シングル」と言う言葉には明確な定義があり、「同一蒸留所内で製造されたモルトウイスキー」となります。
と言う事で、同一蒸留所内で蒸留されたウイスキーを「ヴァッティング」しても問題ありません。
同じウォッシュ(もろみ)でも蒸留中のどのタイミングの原酒なのか、樽の状態、熟成の状況によって、味、香りは変化する為、むしろ蒸留所のチーフブレンダーが、そのウイスキーの味・香り・生産量を安定化させるために様々な樽をブレンドしたり加水して作ります。
また、シングルモルトの中に、1つの樽からのみ作られたウイスキーも存在しており、そちらは「シングルカスクウイスキー」と呼ばれ、加水していない樽出し原酒の事を「カスクストレングス」と呼びます。
「シングルカスク・カスクストレングス」は樽出し原酒そのものになり、貴重で特別な存在になります。
ちなみに、複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドしたものを「ブレンデッドモルトウイスキー」と呼びます。
ヴァッテッドモルトと言う表現が紛らわしい為、2009年スコッチ・ウイスキー規則により、ヴァッテッドモルトと表記することは禁止されました。
4.熟成年数について
順番が前後するかもしれませんが、熟成年数の表記について先に書きます。(銘柄+○年と書いてあるものです)
スコッチウイスキーを例に出すと明確な規定があり、そのウイスキーを作る為に使用した原酒の最低熟成年数を記載する事になっております。
なので、12年でも12年以上の原酒が使われている可能性もあります(実際その様です)。
これはブレンダーの方々が、品質の安定やより美味しくするために、原酒をブレンドないしはヴァッティングする為です。
年数表記のないものはノンエイジ(NA)やNon Age Statement (NAS) と呼ばれたり、表記したりしますが、 熟成されていないわけではなく、ウイスキーの定義である最低3年以上の原酒を使用していると言う事になり、意図的に表記していないと思っています。
尚、シングルカスク表記については、樽出しになりますので、その樽で熟成された期間がそのまま記載されています。
続きまして、「熟成」なのですが、ウイスキーの製造において木製樽熟成が重要なのは前述の通りです。
特にスコッチウイスキーやバーボン(アメリカ)ウイスキー、最近ではジャパニーズウイスキー(日本洋酒酒造組合発行)においてウイスキーを名乗る為に必要な工程になります。
一般に熟成によって、色は無色透明から琥珀色に変化し、風味は甘い香りに変化し、味わいには深いコクが出てくると言われています。
その要因となるのは木製の樽、すなわち木材が主たる要因だと言われています。
そして樽から溶け出す成分は、樽にからそのまま溶け出すパターンと、樽を構成する化合物がエタノールや時間経過により分解・反応して溶け出すパターンがあります。
12年以上熟成したシングルモルトでは樽材由来の不揮発性成分が1樽400Lとすると、1kg以上は溶けだしているそうです。
また、熟成中にウイスキーは揮発して無くなっていきます。これを「天使の分け前(エンジェルズシェア)」と呼び、その割合は温度条件にもよりますが、アルコールが主で蒸発する場合と、水分が主体で蒸発するパターンがあり、その量は年間2%~4%と言われています。
また、樽の材質にも左右されます、一般的にはオーク(ナラの木)が利用されまして、こちらはよりバニラの香り強くなります。
これらが複雑に絡み合う事で、熟成による深みが生み出されるのです。
最後に「熟成年数」についてになりますが、
熟成が進めば進むほどまろやかになり、美味しくなっていくかと言うと必ずしもそうではないようです。
但し、熟成により、前述の「天使の分け前」でウイスキーがなくなっていきますので、年数が多いものほど、貴重かつ高価になっていきます。
味わいは、熟成年数が多い方が一般的にはまろやかになると聞きますが、私の経験では30年ですごくパンチの効いている物もある印象です。
また、樽によって、10年で美味しさのピークを迎えるものもあれば、30年でピークを迎えるものもあるそうです。
美味しいと言うのは人それぞれなので、どう感じるかと言う所ですが、マスターブレンダーが樽ごとに判断しています。
ちなみに同じシングルモルトの銘柄で熟成年数違いというのは、単純に熟成年数が異なるだけでない事は前述のとおりです。
蒸留所がオフィシャルとして出している物は、X年からY年に熟成年数を変えた場合、X年とは異なる種類の樽をヴァッティングする場合もある為、熟成年数が異なる以外にそもそもの味わいの方向性が違う場合もございます。
最後に熟成中の化学変化を以前調べたものを少しだけ書いてみると、 熟成中に、樽材からはリグニン、ポリフェノール、糖やアミノ酸などがウイスキーに溶け出します。 リグニンは植物の細胞壁の構成成分の一つである化合物なのですが、このリグニンが熟成中に、コニフェニルアルコールになり、さらに酸化されてバニリンに変化します。
バニリンは炭素・水素・酸素の有機化合物で、バニラ香の基になる芳香物質です。
バニリンを増加させるために、樽の内面を焦がす(チャーリング)工程が多くの場合入ります(バーボンの場合は必ず行います)、そしてその焦がし具合によっても味、風味が変化します。
その他にも様々な物質が関与していますが、全ては解明できていないようで、解明して抽出した成分を混ぜてもその味にならないそうです。
化学的な反応と、物理的な反応が作用しているともいわれていて、なかなか興味深いです。
また今度、論文などを見つけて記載してみたいと思います。
また、樽材についても勉強のために次回まとめておこうと思います。
5.オフィシャルとボトラーズ
ウイスキーには
・オフィシャル:蒸留所やそのオーナー会社が流通させているボトル
・ボトラーズ:ブレンダーや瓶詰め業者と言われる業者が独自にボトリングしたボトル
と言う分類があります。
※ボトリングとはボトル詰めの事。
個人的には、オフィシャルボトルとはよく言ったり、聞いたりしますが、ボトラーズボトルとはあまり聞きません。
ボトラーズと言うと、瓶詰業者(ブランド)そのものの事を言っていたり、ボトラーズが瓶詰したボトルの事も指しているイメージがあります
ブレンデッドウイスキーの場合ではあまり区分けを聞かないですが、蒸留所のオーナー会社がブレンデッドを出している場合もあるので、そちらはオフィシャルと言って良いと思いますがどうなんでしょう。
まず、「オフィシャル」についてですが、
現時点、ジャパニーズウイスキーで目にするほぼ全部がオフィシャルボトルになりますし、 スコッチウイスキーでもスーパー、コンビニ、酒屋さんも含めて一般的に出回っているものもほぼオフィシャル品になります。
例えば、山崎、白州、宮城峡、ザ・グレンリベットなどなど
製品に蒸留所そのものの名前が付いている事が多く、パッと見て何かがわかりやすいラベルをしています。
特徴としては、通常品と言うようなレギュラーラインナップがあり、品質、供給が安定しています。(供給についてはそもそも流通が少ない場合もありますが、、、)
品質、供給を安定させるために、前述の原酒バッティングを行ったり、加水をしたりして製品化しています。
蒸留所が出していると言う事なので、その蒸留所のスタイル(ハウススタイル)となる公式な味わいになります。
続いて「ボトラーズ」についてですが、オフィシャルよりも一言で表し難いです。
インディペンデントボトラーと言われますが、こちらは前述の通り、ブレンダーと呼ばれるブレンド会社や、ボトリング専門業者が蒸留所から原酒を直接樽買いをしたり、自社で独自に樽詰めしたりして、最終的にボトリングした物を指します。
スーパーでは中々お目にかからないかと思います(一部のブレンデッドはあるかもしれません)、拘りの酒屋さんに置いてある事が多いです。
ラベルや瓶をパッと見ても、どこの蒸留所かわからなかったり、意味の分らない絵が描いてあったりと様々です。
蒸留所が分らないと言うのは、同じラベル、瓶だけど、書いてある文字をよく読むといつどこの誰が分かる場合と、蒸留所名があえて伏せてあり(蒸留所要望の場合あり)、ヒントを絵にしたり、文字にしたりしていて、大体ばれるのですが、完全にシークレットの場合もあります。
特徴としてオフィシャルで通常ないものがあると言う事になりますが、具体的には、
熟成年数、特殊な樽を使用、樽出し原酒(カスクストレングス)になります。
また、樽買いしている事により、多くはシングルモルトでカスクナンバー(樽の管理番号)付きのシングルカスクとなり、蒸留年・樽種類などが記載され、限定商品となります。
オフィシャルには無いラインナップがある事が良いと言う事よりも、個人的には目利きのプロ達が蒸留所のウェアハウス(熟成庫)から最適な原酒を選んで、そこから追熟させたり、樽を変更させる事でより良いものになっていくと言う所が特徴的かと思っています。 もちろん、フルマチュアードと言われる、最初から最後まで同じ樽と言う正に目利きの腕が感じ取れるものもあります
(美味しさは人それぞれ感じ方は違うと思いますが、言い方を選ばないと正直当たりはずれがあります)
なので、ボトラーズ会社は個々の特徴があり、例えばシェリー樽熟成にこだわる場合や、様々なフィニッシュ(最終熟成)樽にこだわったりと、蒸留所がやりにくい、実験的な要素も多分に含んでいて奥が深いです。
個人的には、蒸留所のオフィシャル品よりも、ボトラーズの方がその特徴をつかんでいる様な気がして、特にオフィシャル品はラベルが変更になるタイミングなどで味が変化する事があり、古くからの伝統的な味わいがボトラーズの方にあったりする気がします。(気のせいかもしれませんが、、、)
近年、ウイスキー需要が高まり、蒸留所の原酒が不足している背景から、ボトラーズに回る樽が少なくなっている様子で、 老舗ボトラーズである「ゴードン&マクファイル(GM社)」が今後は買い付けをしないと発表しています。
契約更新ができない、また近年はシングルモルトのオフィシャル品が増加している事からの決断との事ですが、実際はGM社が持つ蒸留所で独自性を出していく方向にシフトする様子で、この様にボトラーズ会社が蒸留所を持っている場合もあり、今後のボトラーズの動向は注目したい所です。
ちなみにGM社は買い付けがなくなるので今後はストックからのリリースになりますが、ものすごい数のストックがある様で 数十年はリリースされそうです。
また、最近では、埼玉県秩父市にあるベンチャーウイスキー社・秩父蒸留所のウイスキーであるイチローズモルトがボトラーズからリリースされたり、日本国内でも動きが出ている様子です。
そもそも樽買いと言う文化ですが、日本でも古くから日本酒で桶買いと言い、違うメーカーが作ったお酒を自社の製品として詰め替えて売っていたりします。
一方、ベンダーと呼ばれる、樽詰め前の原酒を直接買い独自に樽詰め、熟成させる業者もあります。
スコットランドのお隣、アイルランドではこちらは一般的な業態の様です。
おうちでウイスキーでは、オフィシャルボトルとボトラーズの飲み比べに力を入れたいと言う思いがあります。
これは蒸留所公式の味わいと、目利きのプロにより選ばれた一本を飲み比べてそれぞれの特徴を感じ取る事でより幸せな時間を過ごすという理念によるものです。
ボトラーズの沼にもハマってみませんか?(私もお供します)
6.熟成樽について
前述の通り、そもそもウイスキーと名乗る為には、木製樽での熟成が必要で、スコッチやバーボン、ジャパニーズ(新定義)において欠かせない要素となります。
また、スコッチやバーボンにおいては、材料にオーク(ナラの木)樽を使用すると言う事が定義の中に存在している為、材料としてのオークも欠かせない存在となります。
本項ではその「樽(カスク)」について記載していきます。
初めにアメリカのバーボンウイスキーなのですが、バーボンウイスキーには必ずオークの「新樽」を使用する事が義務付けられています。
「新樽」なのでリフィル(ウイスキーを抜いた後にもう一度使う)はできません。
使用後の樽はどこへ行くかと言うと、主にスコッチ等のウイスキーの熟成に使用されます。
また、タバスコやラム、テキーラなどにも使用される為、木材が豊富なアメリカにとってはバーボンの空き樽の輸出と言うのは非常に大きな産業となっており、樽市場は投資家がいるくらい大きい物になっています。
話をスコッチウイスキーなどに戻すと、「樽」は熟成工程において、ずっと同じものを使用している場合もあれば、フィニッシュと呼ばれる追熟工程において、樽の風味をつけるために樽から樽へ移し替えられたりします。
また、初めてウイスキーを詰めた樽を1stフィル、一度抜いてもう一度入れられた樽を2ndフィルと言う様に、一度だけでなく、リフィルされることが普通です。
どの様な樽が使用されるかと言うと、ウイスキーの熟成においては、上記のバーボンを使用した後の樽(バーボン樽)が大部分を占めています。
その他にも、シェリー酒(スペイン産の※酒精強化ワイン)を熟成したシェリー樽、ワイン樽、ブランデー樽、ラム樽など、様々なお酒を保管した後の樽がウイスキーの熟成に使用され、樽に浸み込んだ元々のお酒の風味もウイスキーに影響を与えます。
※酒精強化(しゅせいきょうか)ワイン:醸造過程でアルコール(酒精)を添加することでアルコール度数を高めたワイン。
スペインのシェリー酒、ポルトガルのポートワイン・マデイラワイン、イタリアのマルサラワインが有名。
近年では本当に様々な樽が使用され、日本酒を熟成させた樽やビールの樽を使用したりと、様々な可能性が広がる重要な要素です
一般的に1stフィルは元のお酒の風味が強く出ます、2ndフィルは元の酒の風味は少し収まり、詰めた原酒の風味がより強くなります、3rdは更にと言う様に、詰め替え回数や使われた時間によっても変化する為、どの樽を使用するかについては熟練の目利きが必要になります。
ちなみに、熟成樽の中でもシェリー樽は人気がありますが、供給不足となっているようで、メーカーとしては確保に努力をしているそうです。ウイスキーの熟成の為にシェリー酒を造る様な状況にあるそうです。
続いて、樽材の種類です。
スコッチやバーボンの樽の材料であるオーク(ナラの木)は、木材の中では非常に固く、繊維が詰まっている特徴があり、漏れることが最大の懸案である樽材としては、強度も含めて非常に適している材料と言えます。
一方、アイルランドや日本のウイスキーでは、樽に使う木材の種類の指定がない為、木材が豊富な日本では、桜など固有材料を用いた熟成の可能性が広がると考えます。
実際に、滋賀にある長濱蒸留所の「AMAHAGANE edition 山桜」はフィニッシュと呼ばれる追熟工程に桜の樽を使用していてほんのりとした桜の香が楽しめます。
オーク材の中にも複数の種類があります。
・ホワイトオーク
アメリカンオークとも呼ばれ、北米に生息しているナラの木で、1本の木から使用できる部分が多く、ウイスキー全体として樽材はほぼこの材料を使用しています。
味わいへは、バニラやハチミツ、カラメルなどの様な甘いフレーバーを与えるのが特徴です。
・スパニッシュオーク
ヨーロッパオークやコモンオークとも呼ばれ、ヨーロッパに多く生息しているナラの木になります。かつては、ウイスキーの熟成において主流であった木材ですが、耐水性が低く水を通しやすいことから、アメリカンオークが使用されるようになりました。
ポリフェノールやタンニンを多く含んでおり、ドライフルーツの様な甘く、フルーティーな香りが特徴です。
シェリー酒の熟成に使用される為、シェリー樽を使ったウイスキーはこの樽と使用しています。
・フレンチオーク
フレンチオークはその名の通りフランスを中心に生息していて、セシルオークとも呼ばれ、特徴として含有されているタンニンの量が多いこと挙げられます。
フランスと言えばワインですが、そのワインの熟成にはタンニンが多く含まれた樽が欠かせないため、ワインの熟成に適した木材です。
熟成に使用すると、スパイシーな香りが特徴的と言われています。
・ジャパニーズオーク
その名の通り、日本に多く自生するナラの木になります。
木一本から採れる樽材料が少なく加工に非常に手間がかかる為、コストパフォーマンスの悪く、また含有するタンニンの溶け出しが遅く熟成に長い時間(10年以上)を要すと言われおり、日本以外ではあまり使用されません。
その特徴は、香木の様なオリエンタルな香りと強いアロマをもたらし、唯一無二の洗練された味わいとなる為、近年日本のみならず世界中から注目を集めています。
スコッチでは、「シーバスリーガル」がフィニッシュで使用している「シーバスリーガル ミズナラ」は目にする機会が多く、その他の蒸留所も特別なウイスキーとして限定販売されています。
日本では、サントリーの「山崎」に使用されていたり、クラフト(小規模系)の蒸留所においても使用されています。
以上の様に、樽の材料も様々で、オーク材にも種類と特徴があります。
複数の樽材を組み合わせて樽を造り、複雑な味わいを出す様な工夫もされているようで、こちらもシーバスリーガルになりますが「ユニティカスク」と言うボトルがあります。
続いて、樽そのものの種類についてです、
輸入された樽は一度分解されて、再度組み直されます。
クーパーと呼ばれる、職人さんたちが手作業で行っており、材料の良しあしを見極めて、チャーリングなどの工程を経て 、様々なサイズの樽に組み直されます。
代表的な樽は以下です。
・バレル
容量は約180~200リットルで、バーボン樽などのサイズそのまま。
・ホグスヘッド
容量は220~250リットル。ホグスヘッドとは「豚の頭」の意味でウイスキーを詰めた樽の重さがおよそ豚一頭と同じであることが由来と言われています。
・バット
容量は約500リットル。ラテン語で「大きい樽」を意味し、シェリー酒の貯蔵に使われるサイズ。
・パンチョン
バットよりも丈が短く太い、一般的にアメリカンオークやスパニッシュポークが使われる。
・クォーター
容量は約50リットル。バレルの4分の1(クォーター)のサイズで、原酒と樽の接触面積が多いのでより早く熟成が進みます。
・オクタブ
容量は45~68リットル。オクタブはバットの8分の1の大きさで製造される小型のシェリー樽です。こちらもサイズが小さいのでより早く、複雑な熟成となります。
以上、長くなりましたが、「樽」は、ウイスキーの熟成に関して非常に重要な要素であり、面白い部分の一つです。
使う樽で、同じ原酒でも全然違う味わいになったりと本当に楽しいです。
しかし、樽には膨大な情報があり、全部知ることもまとめる事も大変です。
おうちでウイスキーでは、「深めるシリーズ」に「樽を深める」シリーズを限定ですが展開しています。
是非、「樽」の沼へ。私もお供します。